1 森で見たもの

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1 森で見たもの

 おれは小学生の時、狼を見た。  小学校の傍に小さな森があって、そこでかくれんぼをしていた。  おれは絶対に見つけられないぞ! と言い切って、大きな木に登り、息を殺してじっと隠れていた。だけど、空が暗くなり、森の中がひんやりとしてきた。おれは、自分の息づかいがうるさく感じると、やっと気が付いた。  ――おれ、置いて行かれたんだ。  木の下を見ると、暗く、地上が見えない。おれは唾を飲み、手と足の感覚を頼りに降り始めた。木のざらざらした感触、湿った匂い、感じるすべてが、不気味だった。  ――すると、右足を滑らせて、バランスを崩し、尻餅を着く。――どうやら、地面までまもなくだったらしい。落ち葉は柔らかく、怪我をしないで済んだ。
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