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その日曜日は突然の豪雨に見舞われた日だった。コンビニのバイトを終え、御園のマンションに向かう途中で滝のような雨に捕まったという。
「すみません、タオルを貸して貰えますか?このまま上がってしまうと廊下を水浸しにしてしまいそうです」
玄関先には濡れ鼠のようになった碧稀が立っていた。タオルを御園から受け取り上着を脱いだその時、肌にぴたりと貼り付いたがシャツその下にある身体を浮き上がらせていた。
その姿に身体の芯がずくりと熱くなる。今まで考えないようにしていた。この先の未来に何があるのかと。まだ若芽のような穢れを知らない身体を汚してみたい。無理矢理咲かせてみたい。誰も触れたことの無い奥まで触れたい、どろどろとした感情が溢れ出す。
アルバイトという口実は碧稀に与えたものではなく、自分への言い訳だと知る。無意識だとしても、どうにか碧稀とつかながっていたかったのだ。
「シャワー使いなさい。服は……好きなもの着て帰って構わない。これから少し出てくるから」
「雨酷いですよ?もう少ししてから出た方が」
急ぎだからと言い残し車の鍵を掴むと地下の駐車場へと向かった。車のハンドルを両手で掴むと頭を落とした。前に進むこともできず、後戻りもできない袋小路に迷い込んでしまったようだ。
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