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食事の支度をしますからとバスルームへ追いやられた。そんなに傷ついた顔をさせたい訳じゃなかった。言い訳をするつもりはないが、このままにしておいて良いことではない。
シャワーを浴び、汗と迷いを流してリビングに戻った。キッチンには若い恋人が立っている。その横に並ぶとその手にあったスポンジを取った。
「あ、大丈夫です。僕に最後までやらせてください」
「一緒にやった方が早いだろう。できない訳ではないんだ。やらなかっただけで」
「……すみません」
「ん?」
「僕、感じ悪いですよね」
「いや、そんなことはないよ」
「あの人は僕の知らない御園さんを知っているんですよね」
「そうなのかな」
「何も言う資格ないの分かってます。でも」
「傷つけるつもりは無かった」
「分かっています。恋人だった訳ではないし。でも納得はできていないです」
「ああ」
「他の人の側へ行って欲しくないと思うのは間違いでしょうか?」
「二度とない、誓うよ」
「……今日は、帰りたく無いです。いいですよね」
「帰りは送るよ」
「僕とはセックスはできないってことですか」
「しない」
「どうして!」
鍋がふきこぼれて、ガス台からエラー音が響いた。手を伸ばしてガス台のスイッチを切る。碧稀は下を向き唇を噛んでいた。体が小刻みに震えている。
「少しずつ進めていこう。大切に思っているよ誰よりも」
「でもこの僕の気持ちはどうすればいいのでしょうか」
ただ一緒にいるそれだけで良い、そんなことは決して無い。笑い合い共に過ごす楽しい時間はもちろん大切だが、恋人として甘い時間を分け合うことも必要なのだ。
欲を吐きだし、欲に溺れたいと心の底では思っている。自分が高校生の時はもっと乱れた生活をしていた。けれども今、大人になり高校生と付き合っているという事実がこの先へ進ませないブレーキとなっている。
「俺に道を踏み外せって?」
「……ですよね。分かりました高校卒業したら、そうしたら御園さんは抱いてくれるのですか?」
「そんな言い方するな、まるで卑下しているように聞こえる。よし、仕切り直しだ。碧稀、外に飯食いに行くか」
「でも」
「食事終えたら送っていくよ」
返事をしないその頬を両手で包み込み、その瞳を見つめた。ゆっくりと閉じていく瞼に鼻に頬に口付ける。はぁと小さく漏れた息を捕まえ飲み込むようにその口をおおった。薄く開いた唇を押し開き舌を絡める。呼吸が追いつかないのか碧稀は苦しそうな表情をした。下半身に血が集まるのが分かる。腰をぐっと押し付けるとびくりと身体がはねる。
「なあ、俺だってぎりぎりだよ」
耳元でそう囁くと、あっと小さな声をあげた碧稀が真っ赤になって身体を震わせた。
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