第十三章 碧玉

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 土曜日の朝目が覚めると服を着替え、コーヒーを落とす。今日から世の中は三連休だ。ゆっくりと伸びをすると、ぼんやりと窓の外を見た。昨日の夜の拗ねたような碧稀の顔を思い出す。  映画を見ながらピザを食べている時、いつもの習慣で考えずにビールを手にしてしまった。映画が終わる頃には終電もなくなり、飲んでしまった為に送っていく手段が無くなっていた。もう帰れませんよねと笑う碧稀にタクシーで送るよと伝えると「勿体ないです、ソファで寝ますから」とさっさと寝支度を始めてしまった。  ずるずるとなし崩しになるのは本意ではない。ジャケットを掴むと「帰るよ」と外へと碧稀を連れ出した。アプリでタクシーを呼び一緒に乗り込んだ。 御園さん強情ですね、少しくらい流されてくれてもいいのにと口を尖らせた顔が可愛かったのだ。思い出すと、思わずにやけてしまう。  インターフォンが鳴り、朝早くから何だろうとモニターを覗くとそこには笑顔の碧稀がいた。  「早いな、迎えにいく予定だったんだが」  「御園さん、携帯まだ見てないのですね」  「ん?」  携帯には行きたいところがあるので、これから出ますとメッセージが届いていた。早く着替えてくださいと急かされる。  「どこに行きたいんだ?」  「出かけましょう!」  急き立てられ、どこへ行くとも告げられず電車に乗った。楽しそうな碧稀を見て何処へ行くかより誰と過ごすのかがやはり大切なのだと考えていた。
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