第十三章 碧玉

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 何処へ連れていかれるのかは駅を降りる前に分かった。笑顔の親子連れや若い恋人達に混じって自分は場違いなような気がしたが、他人の事なと気にかける人はあまりいないようだった。  「チケットは?」  「もうネットで買って有りますよ。当日にチケットなんて買えませんから」  「いくらだった?」  「内緒です。だって御園さんの誕生日のお祝いだから。本当は明日のチケット取りたかったのですが、取れなくて。今日はバースデイイブです」  「学生には負担だろ」  「んー、でも正確には御園さんからもらったバイト代から出てますから、還元中ですね」  くすくすと笑う碧稀につられ笑顔になる。サプライズを喜ぶ年齢ではないと思っていたが純粋に嬉しい。恋人には手をかけて、甘やかして何処へも行けないほど依存させるのが常だった。けれどもこうやって先回りされるのも悪くは無いと思った。  「そうか、ありがとう。じゃあ楽しむしかないな。おいで」  碧稀の手を取ると指を絡める。突然のことにあわあわとしていて可笑しくなる。  「み、御園さん」  「誰も人の事なんて気にしてないよ」  「は、はぃ」  「明日からは20歳差、親子でも有り得る年齢か。なかなか背徳感あるな」  「誰も気にしないんですよね、じゃあ御園さんも気にしませんよね」  確かにそうだなと声を立てて笑った。
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