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「マジでヤバイんだよ」
って、冷や汗をかきながらデブのペーが言う。
「はあ……」
「はあ、じゃなくて。だから今日さ、夜に屋上であんじゃん、天体観測部で『流れ星を見よう』みたいなの。サノチン、頼むからそれに参加させてくれよ」
ペーが言ってる天体観測部は、ほんとうはまだ正式な部にもなってない同好会みたいなもんで、まだおれを含めて入ってるのは三人しかいない。
「いいんじゃないの? 自由参加だし」
「ひとりじゃ行けないから言ってんだよ!」
今日は一学期の終業式。
明日から夏休みで、もうみんな浮かれてるのに、なんでペーはこんなに焦ってるんだろう?
「でもお前、なんで参加したいの? 星とか興味ねえだろ?」
「ねえよ!」
なんで急に怒るの?
意味わかんねえ。
「おれさ、いつも屋上にいるだろ」
「うん」
ペーとミヤオとガラシの三人、帰宅部のくせにいっつも屋上でダラダラしてる。
「そんでさ、きのうエロ本もってったんだよ、屋上に」
「持ってくんなよ」
「しょうがねえだろ、読みてえんだから!」
だからなんで急に怒るの?
意味わかんねえ。
「で、みんなでエロ本読んでたら、小宮先生が来ちゃってさ。マジビビって上に投げちゃったんだよ、エロ本」
「上って、あの給水塔のとこ?」
「そう。そんで、そのときはなんとかごまかせたんだけど、安心しちゃって、エロ本忘れてきちゃったんだよね」
「いま取りに行けばいいじゃん」
「さっき行ったんだよ。そしたらカギ閉まってた。たぶんコミセンだな」
「明日から夏休みだから?」
「明日から夏休みだから」
「だから今日のやつ来たいってこと?」
「そう。あのエロ本、兄ちゃんのやつなんだよ。兄ちゃんの部屋あさってたらあったやつ。バレたら、おれ、殺されるぞ!」
おれにはなんの関係もない話だけど、めっちゃ青ざめてるペーがかわいそうだったから、「体験入部したがってる」ってことにして、連れてってあげることにした。
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