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「先生、あの、給水塔のとこ行って、そこから見てもいいですか?」
ガマンできなくなったみたいで、ペーが急に言う。
「給水塔?」
「はい。あの——」入口の脇の壁から生えたハシゴを指さすペー。「——あそこから」
「うーん。でも危なくないかなあ?」
「大丈夫です。気をつけるんで」
「うーん」
東先生が困った顔をする。
東先生を困らせるぺーにちょっとムカついたけど、それが理由で連れてきちゃったし、助けてやろう。
「先生、とりあえずぺーに行ってもらって、安全かどうか見てきてもらったらいいんじゃないすか?」
「そうだねえ。じゃあ、そうする?」
「はい! そうします!」
言って、ペーがおれに「グッジョブ!」の視線を送ってきた。
で、ふたりでハシゴのとこまで向かった。
「ありがとな」
「いいから、すぐ行って、すぐ取って、すぐ降りて来いよ。先生に迷惑かけんな」
「オーケー」
バカみたいに親指を立てて言って、ペーがハシゴを上っていった。
「あったか?」
「……あったよ」
なんか、ヘコんでんな。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねえよ!」
だからなんで急に怒るの?
てか、どういうこと?
「どういう—」
「なんかあったあ?」
おれの声を、東先生の心配そうな声が遮った。
「プギッ!」
急な東先生の声に、ペーが豚声でこたえる。
「だ、大丈夫でーす。でもダメでーす。下りまーす」
言って、ペーが下りてきた。
「大丈夫だった?」
「はい、大丈夫です。でも上、めっちゃ汚かったから、ダメです」
「そっかあ。そりゃ残念だねえ。じゃあ、もどろっか」
言って、森田たちのほうにもどっていく東先生。
おれもペーと一緒にもどりながら、
「回収したか?」
って聞いた。
「うん。できたんだけどさ。上、マジで汚かったんだよ」
「さっき聞いたよ。なんだ、マジ上で見る気だったのかよ?」
「そんなわけないだろ。汚れてたんだよ、エロ本が」
「あー」
そういうことか。
「なんとかなんねえの?」
「とりあえず流れ星みつけて、願うわ」
「なんて?」
「決まってるだろ。『エロ本、キレイにしてください』ってだよ」
「ははっ」
史上最低の願い事だ。
で、もどったら、森田と東先生が並んで夜空を見上げていた。
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