いじめられっ子

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「ああ、誰にも言うなよ……」  翔太は人差し指を自分の唇に当てた。   「……言わへん……。約束や」と、浩史は握った拳の小指を立て、翔太に見せる。浩史は白い歯を見せた。    翔太誰かと唇を合わせるのは初めてのことでは無かったが、同性のそれは初めてだ。が、抵抗は無かった。    :    その日の夜、翔太は自分の勉強部屋にいた。車で三十分程走った街で小料理屋を経営している両親は家を空けている。灰皿代わりのコーラの空き缶に置いたマイルドセブンが白い灰に変わり項垂れた。ラジカセから翔太のお気に入りのサザンの曲が流れている。  ――もう、いいか……。  翔太は自分のスラックスのポケットから大学ノートの切れ端を出し、丸めた。どこかの喫茶店で手に入れた紙製マッチを擦って、空き缶に放り込む。空き缶は白い煙を上げ、きな臭い匂いが部屋に広がった。  
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