いじめられっ子

5/6
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 2    浩史と唇を合わせてから数日後の夜、翔太の自宅の呼び鈴がけたたましくなった。書き入れ時だと言う翔太の両親は、今日も家を空けている。翔太は玄関を開けると、頬を自分の手のひら覆う翔太の姿があった。   「……佐隈、どうしたっ」    浩史の背中には上履きで蹴り付けられたような白い足跡があり、その顔には青あざが何か所もあった。その上着は刃物で裂かれていた。    翔太は勉強部屋に浩史を案内した。   「僕……松田とケリつけようとして。もう、翔太を虐めんといてくれって……」    浩史は切った唇から出た血液を自分の手のひらで確かめるように摩った。   「……タイマン張ったのか?」   「……だけど、奴の仲間に呼び出されて……この通りボコボコや」    浩史は腫れ上がった目で翔太を見た。   「バカだな、俺、……。アイツ……松田は地域でも有名な暴走族の総長なんだ。その気になれば、仲間なんて直ぐに呼べるんだ。だから、もう無茶するなよ」    翔太は浩史を抱き寄せ、唇を重ねた。舌先で彼の舌を探ると鉄の味が口腔に広がる。浩史の舌先に探られる。口角から溢れ出す唾液が喉元に滑る。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!