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千世のあまりにも小さな声は、本当に耳を澄まさないと隣のテーブルにかき消されてしまいそうなほどだった。余程言い難いことなのかと悟った将生は、持っていたおしぼりをテーブルに置き、千世の頭にまで伸ばしていた片腕も下げて、千世の両手をそれぞれ握った。
「この前の・・・エ、ッチ、しそうになったとき・・・言うたやん、太ったって」
「・・・え、俺そんなこと言うた?」
「言うたわ!」
自分の思わぬボリュームの声に千世がハッと周りを見渡したすと、周りのテーブルに座っている客が一斉に二人に視線を向けている。千世は一気に恥ずかしくなり咄嗟にそのまま俯くけれど、その目の前から「あー、お騒がせしてすいません、お構いなくぅ」と将生が周囲に向かっていつもの調子でニコニコと頭を下げる。すると周囲もすぐに何事もなかったかのように自分たちの会話へと戻っていく。
その後、ある程度のざわめきが戻ったところで千世が話しやすいように将生は「で?」と話の続きを促す。
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