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まっすぐ前を見たまま何も言わない将生に、千世はこれが将生の心の内とでも言うように、否定的な言葉を投げる。将生がゆっくりと千世へと顔をあげると、千世の瞳はいつもの何倍もの水分で潤っていて、いまにも零れ落ちそうになっている。
「泣いてるん?」
「泣いてへんっ」
強がって反論する千世だけれど、言葉とは反対にその滴は千世の手を握りしめていた将生の手の甲を濡らした。
「俺は、そんなんとか思わへんよ」
「・・・」
「千世が努力してないとも思わへん」
「ケーキ、食べるのやってちゃんと我慢したやんか」と将生はにっこりと千世に向かって白い歯を見せ、涙の流れた頬を親指で拭った。
「でも・・・自分で努力してダイエット成功してる女の子はいっぱいおるのに」
「他と比べてどうするん。千世は綺麗になりたいって思ったからそうしたいんやろ? 元は俺を見返すためかもしらんけど、俺に綺麗になったって言ってほしくてやるって決めたことなんやろ? それも努力やんか」
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