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プロローグ
およそ魔物というものは、古来魂を持たず、人間を陥れるを楽しみとし、ただかりそめの享楽に耽ってその長い命の時間をいたずらに過ごし、おのれの無益と非生産を誇るを憚らぬ存在と信じられてきたものであるが、ここにそうした魔物たちの輪に加わらず、世界に背を向け、冷たい風の荒れ狂う寂しい荒野にたったひとり、無限ともいえる時間を過ごす魔物がいた。
この魔物は、見た目だけは魔物の領袖と言っても通りそうな威容を誇っていたが、その魔力は弱く、争いを好まない性質だったため、ほかのどんな小物の使い魔などよりも軽んじられていた。結局、彼はほかの魔物たちから無視され、ついにはその存在を忘れ去られるに至った。
彼はただ長い孤独に甘んじ、鬱々と館の中に引きこもり、この先も延々と続くであろう虚しい命の時間を過ごしているのだった。
これは、そんな名を持たぬ魔物と、ひとりの人間の娘の物語である──。
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