番外編『赤い薔薇の騎士』4

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番外編『赤い薔薇の騎士』4

「瑠衣、感じているのか」 「……んっ、ん……あ……いやっ」  それもそうだろう。  わざと感じやすい場所に、痕を残したんだ。  俺たち……再会してから、何度抱き合ったことか。  数え切れない程の逢瀬を経て、今があり、未来があるんだ。 「瑠衣……もっと感じて……力を抜いて、素直に感じて……」 「アーサー……あぁ……っ」  もう一度キツく吸うと、そこが赤い薔薇の花びらのように色づいた。 「まるで……薔薇の花が積もったみたいだな……ここも、ここも」  瑠衣の滑らかな肌は、全身にうっすらと汗をかいていた。  俺も興奮して、息がかなり荒くなっていた。  深く息を吸ってから、再び瑠衣の胸元に顔を埋めた。  ツンと立ち上がった両胸の尖りを交互に舌先で転がしたり、舐めて……どんどん瑠衣を追い詰めて高めていく。  瑠衣のものも刺激を受けて、俺の腹にあたる。  切なく……ゆらゆらと揺れている。  瑠衣の全てが可愛い。  そこをやんわりと握りしめると、瑠衣が切羽詰まった表情を浮かべた。 「はぁっ……あっ……あ……っ! もう……いく……っ」  こんな風に、瑠衣の声が艶めいて上擦っていく瞬間が好きだ。  そのまま仰向けになって俺を見上げる瑠衣の脚を大きく開かせて、身体を沈めていく。 「一緒にいこう」 「ん……あぁっ」  シルクのパジャマを滑るように脱がせ一糸まとわぬ姿に剥いていくと、瑠衣も腰を浮かせて協力してくれる。 「俺の瑠衣……」 「あ……アーサー、僕のアーサー」  瑠衣の腕が、ふんわりと俺を抱きしめてくれる。  こんな時でも、ひたすらに優しい瑠衣。 「中に挿れるよ」 「んっ」 「辛くないか」 「大丈夫だ」  腰をゆるやかに揺らして少しずつ中へ潜っていくと、熱くてやわらかいものに包まれる。そこから一気に瑠衣の細い片脚を抱え上げて、奥を穿つ。 「……あぁ……っ、あぁっ……」  そのまま、二人は夢を見る。  遠い遠い昔、まだ二人が出逢っていない頃の世界の夢を見る。 …… 「アーサー、8歳のお誕生日おめでとう」 「おばあさま! ありがとうございます」 「まぁ私が贈った衣装を着てくれたのね。よく似合っているわ」 「でも……少しだけはずかしいです。男なのに赤いバラだなんて……へんじゃありませんか」 「そんなことないわ。赤い薔薇は『愛情』を表しているのよ。アーサー、あなたには伯爵家の嫡男として生まれて輝かしい未来が待っているけれども、どうか忘れないで。一番大切なのは、愛情よ……お金や身分では買えないものがあるの。あなたには……愛溢れる人になって欲しくて、その衣装を贈ったのよ」  大好きなおばあさまの言葉を、胸に刻む。 「おばあ様、アーサーは……じゃあ『愛の騎士』になります!」 「まぁ! うふふ。あなたは本当に素直で可愛い子ね、大好きよ」  おばあさまに抱きしめられて、溢れんばかりの幸せを受取った。 「あれ?」  ふと顔を上げると、おばあさまの背後に小さな男の子が立っているのが見えた。同い年位の黒いサラサラの髪と黒い瞳……異国の子供のようだ。とても可愛い顔立ちで、黒目がちの瞳で、じっとこちらを見ている。 「おばあさま……あの子はだあれ?」 「まぁ、来ていたのね……この子は……いずれ……あなたの……」  そこで夢は走馬灯のように、時代を駆けていく。  瑠衣とロンドンの霧の公園で出逢った日から、今日までの日をくるくると……  ロンドンの屋敷、衣装部屋、イースターのピクニック。  日本への帰国、再会と試練の日々…… 「俺の君……君は瑠衣……俺の瑠衣だ」  あぁ……いつの日の瑠衣も愛おしい。  あの過去があったから、今があるのだ。  今度は瑠衣の夢にお邪魔しよう。  可愛い坊やが遊びに来てくれているはずだ。  さぁ、夢の世界へ飛び立とう!  俺たちは夢の中でも、いつもずっと一緒だ。
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