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番外編『赤い薔薇の騎士』6
朝目覚めると、布団の中がポカポカしていた。
温もりが消えていない!
これって……もしかして!
目をそっと開いて、隣りにまだ可愛いあの坊やがいてくれるかを確認した。
「あ……寝息が聞える!」
「しーっ、瑠衣、起きたのか」
つい大きな声を出してしまったので、今度は潜めた声を出す。
「アーサー、嬉しいよ。メイくん、ちゃんと朝までいてくれたんだね」
「あぁ、だから言ったろ」
「うん、うん!」
「フッ……こういう時の瑠衣は可愛いな。君は本当に子供が好きなんだな」
「うん……そうなんだ」
暫くの間、アーサーと二人で、すやすやと眠るメイくんの寝顔を眺めた。
「子供って全部が小さいんだね。この手……まだぷくぷくしていて可愛いね。目も鼻もお口も、全部小さくて愛らしいね」
「この子は前に会った時よりも大きくなったが、まだまだ子供だな」
「うん……また逢えるなんて思ってなかったから、嬉しいよ」
やがて朝日を浴びた黒い睫毛が震えて、メイくんがぼんやりと目を覚ます。
「お! 起きたみただな」
「うん……驚かせないように、優しく接しようね」
「あぁ」
アーサと僕は優しく微笑みあった。
アーサーこそ、父親のような愛情深い眼差しだよ。
「メイくん、おはよう。またイギリスに来てくれたんだね」
メイくんは目をパチパチさせていた。
「あぁ、驚かせるつもりじゃ……僕たちのこと覚えているかな?」
はたして小さな子供の記憶はどこまであるのか……
そんな心配を余所に……メイくんは元気よく飛び起きてくれた。
「あー! ルイさんとキシさんだ!」
その様子に、僕たちは胸を撫で下ろした。
アーサーもとても楽しそう。
「はは、だから俺はアーサーだって! まぁ愛する瑠衣を守る騎士さんだけどね」
アーサーが僕に向かって投げキッスをしたので、焦ってしまう。
「アーサー、子供相手に……な、何を言って?」
ところがメイくんは臆することなく、目を輝かせてくれた。
この坊やは……やはり男性同士の愛に免疫があるのかも。
良かった。
その様子に、僕の方も平常心を取り戻していった。
「メイくん、お久しぶり。君にずっと会いたかったよ」
僕が両手を広げると、メイくんが胸元に飛び込んできてくれた。
まるで天使みたいに、ふわりとね。
「良かった……今度はちゃんと朝までいてくれたんだね。嬉しいよ」
「えー、やっぱりもう朝なの? はやくおきがえしないと……あ、でもボク、ここにはもってきてないよ」
メイくんが不安がっているので、優しく背中を撫でてあげた。
「着替え? あぁ服なら、ちゃんとあるよ」
「アーサー、あの衣装が役立つ日が来たんだね。待っていて」
僕は嬉しくて、アーサーにメイくんを預けて、赤い薔薇の衣装を取りに行った。
「あれ? これって」
「これは俺が君位の時にパーティーで着た洋服だよ。よかったら着てくれないか」
「でもぉ……とっても大切なおようふくなんでしょう? ボクが着てもいいの?」
「もちろんだよ。メイくんが着てくれたら嬉しいよ。さぁ僕に見せて」
「うん!」
朝までいてくれたことも、この衣装を着てくれることも、何もかもが嬉しくて夢のようで、つい涙ぐんでしまった。
「ルイさん?……えっと……泣かないで。僕のお兄ちゃんも泣き虫なんだよ」
「ごめんね……うれしくて」
「そっか、うれしい涙なんだね、よかった」
僕は膝を床について、メイくんに赤い薔薇の衣装を着せてあげた。
(読者さまが作って下さった衣装です。まるさんありがとうございます)
「可愛い……とっても可愛いよ! 小さな騎士だね。メイくんとってもカッコイイよ」
「えへへ」
メイくんが照れ臭そうに笑ってくれる。
その笑顔につられて、僕とアーサーも笑顔になる。
「あーあ、瑠衣は坊やにメロメロだなぁ」
「あ……ごめん。アーサーの小さな頃も想像してしまって……二重に可愛いんだ」
「そ、そうなのか。俺のことも考えてくれたのか」
もちろんだよ。
可愛いメイくんと、幼い頃のアーサー
どちらも、ずっと会いたかったんだ。
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