番外編 赤い薔薇の騎士 8

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番外編 赤い薔薇の騎士 8

 芽生くんが朝霧に消えて行く瞬間を、瑠衣と肩を並べて見送った。  前回のような寂しさはないが、瑠衣は少し意気消沈しているようだった。 「瑠衣……寂しいのか」 「うん……もう会えないと思うと、少しだけね……でも僕には君がいる」  珍しく瑠衣から俺に抱きついて、唇を重ねてくれた。  キスは少しだけ……しょっぱかった。  やはり泣いて……  これは、瑠衣の涙の味。  俺が薄めてやるよ。 「ん……んんっ」  キスを深めて、何度も耳元で囁いた。 「大丈夫だ。俺は消えてなくならない。小さな騎士には戻れないが、大人の騎士として君を守るよ」 「君があの薔薇の衣装を着た所も見たかった……なんて欲張りだね、僕……」 「そんなことない! 瑠衣は謙虚過ぎるんだ。もっと欲張って欲しい」  その日の午後、俺は屋敷をそっと抜け出して、テーラーに駆け込んだ。 「この赤い薔薇の子供服と同じものを、大人用に仕立てておくれ」  さぁ仕上がりが楽しみだ。 **** 「瑠衣、こっちに来てご覧」  衣装部屋に、君を誘う。   「アーサー? 一体どうしたの?」 「いいから、いいから……」  瑠衣が不思議そうな表情を浮かべながら、近づいてくる。  衣装部屋に入った途端、すっぽりとほっそりとした身体を抱きしめた。 「瑠衣、俺を見てくれ」 「え……っ、アーサー、この衣装って」 「瑠衣……赤い薔薇の騎士が、君を迎えに参りました」  俺は赤い薔薇の衣装を身につけ、恭しく膝を折り、瑠衣の手の甲に優しいキスをした。 「真実の愛と永遠の愛をお持ちしました」 「アーサー、君って人は……もうっ……」  瑠衣がふわりと俺の胸に飛び込んでくれた。 「愛してるっ、僕のアーサー!」  瑠衣が俺の耳元で……何度も何度も愛を語ってくれる。  甘い声で。 「俺もだ、俺の瑠衣……」    俺は、瑠衣の『赤い薔薇の騎士』になりたい。  あの日、おばあ様に誓った言葉を思い出した。 「真実の愛を探しにいきます」  その答えは見つかった。  瑠衣に出逢えたから。  この先は騎士として、その愛を守っていく。  それが俺の人生だ――                     『赤い薔薇の騎士』 了 **** 久しぶりに『ランドマーク』を書きました。 瑠衣とアーサーはこんな甘い雰囲気が似合いますよね。 『幸せな存在』の芽生とのクロスオーバーも、書いていて楽しかったです。 再びアーサーと瑠衣に会う機会もあると思いますので、その日まで楽しみにしていて下さい💕ペコメ、スタンプ、スターで応援ありがとうございます。
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