2976人が本棚に入れています
本棚に追加
番外編 赤い薔薇の騎士 8
芽生くんが朝霧に消えて行く瞬間を、瑠衣と肩を並べて見送った。
前回のような寂しさはないが、瑠衣は少し意気消沈しているようだった。
「瑠衣……寂しいのか」
「うん……もう会えないと思うと、少しだけね……でも僕には君がいる」
珍しく瑠衣から俺に抱きついて、唇を重ねてくれた。
キスは少しだけ……しょっぱかった。
やはり泣いて……
これは、瑠衣の涙の味。
俺が薄めてやるよ。
「ん……んんっ」
キスを深めて、何度も耳元で囁いた。
「大丈夫だ。俺は消えてなくならない。小さな騎士には戻れないが、大人の騎士として君を守るよ」
「君があの薔薇の衣装を着た所も見たかった……なんて欲張りだね、僕……」
「そんなことない! 瑠衣は謙虚過ぎるんだ。もっと欲張って欲しい」
その日の午後、俺は屋敷をそっと抜け出して、テーラーに駆け込んだ。
「この赤い薔薇の子供服と同じものを、大人用に仕立てておくれ」
さぁ仕上がりが楽しみだ。
****
「瑠衣、こっちに来てご覧」
衣装部屋に、君を誘う。
「アーサー? 一体どうしたの?」
「いいから、いいから……」
瑠衣が不思議そうな表情を浮かべながら、近づいてくる。
衣装部屋に入った途端、すっぽりとほっそりとした身体を抱きしめた。
「瑠衣、俺を見てくれ」
「え……っ、アーサー、この衣装って」
「瑠衣……赤い薔薇の騎士が、君を迎えに参りました」
俺は赤い薔薇の衣装を身につけ、恭しく膝を折り、瑠衣の手の甲に優しいキスをした。
「真実の愛と永遠の愛をお持ちしました」
「アーサー、君って人は……もうっ……」
瑠衣がふわりと俺の胸に飛び込んでくれた。
「愛してるっ、僕のアーサー!」
瑠衣が俺の耳元で……何度も何度も愛を語ってくれる。
甘い声で。
「俺もだ、俺の瑠衣……」
俺は、瑠衣の『赤い薔薇の騎士』になりたい。
あの日、おばあ様に誓った言葉を思い出した。
「真実の愛を探しにいきます」
その答えは見つかった。
瑠衣に出逢えたから。
この先は騎士として、その愛を守っていく。
それが俺の人生だ――
『赤い薔薇の騎士』 了
****
久しぶりに『ランドマーク』を書きました。
瑠衣とアーサーはこんな甘い雰囲気が似合いますよね。
『幸せな存在』の芽生とのクロスオーバーも、書いていて楽しかったです。
再びアーサーと瑠衣に会う機会もあると思いますので、その日まで楽しみにしていて下さい💕ペコメ、スタンプ、スターで応援ありがとうございます。
最初のコメントを投稿しよう!