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2022年 番外編『Happy Halloween アーサー&瑠衣Ver.』
「瑠衣様、ロンドンからお荷物です」
「そこに置いておいてくれ」
書斎で執事としての業務をこなしていると、大きな小包が届いた。
「何だろう?」
持ち上げると大きい割りに軽くて……不思議だった。
「洋服にしては嵩高いし、帽子にしては大きすぎる箱だ。一体誰からだろう?」
差出人を見ると、本人となっていた。
宛先はアーサーだ。
「なんだ、また無駄な物を買ったのか」
アーサーは気前が良すぎるよ。ロンドンに行けば、僕に似合いそうとか僕が喜びそうと、とにかく色んな物を買い込んでくる。
僕の部屋は、お陰でパンパンだ。
屋根裏部屋でトランク一つにも満たない荷物で過ごしていた頃とは桁違いだ。でも何より嬉しいのは……僕の心がいつも幸せで満たされていることだ。
「瑠衣、ただいま」
「アーサー、君宛の荷物が届いていたよ」
「おぉぉ、待ってました!」
アーサーは嬉しそうに、そのまま荷物を持ってそそくさとUターンしてしまった。
よほど気に入ったものが届いたらしい。
くすっと笑って、僕はまた仕事に没頭した。
夕方、アーサーが僕を呼ぶ。
「そろそろ日没だ。着替えよう」
「うん? どうして?」
「今日はHalloweenだからさ」
「あ……そうか!」
「そろそろ教会の子供たちがお菓子を取りに来るぞ。早く仮装しよう!」
「そうだね。で……今年の衣装は? 去年のアーサーのドラキュラ伯爵は最高にカッコよかったよね」
「ふふん、今年は可愛い路線さ」
荷物の正体は、なんと大人サイズの着ぐるみだった。
アーサーが黒いうさぎで、僕が白いうさぎ。
「ふわふわでいい毛並みだろう。触り心地にこだわったのさ。ロンドンで
ぬいぐるみ屋に頼んで特注したのさ」
「ふぅん……でも一時の仮装にかけるには、いかがなものかな?」
「そんなことない。これは俺たちの重要アイテムだ」
「アイテム?」
「いや、なんでもない」
お菓子をもらいに来る子供たちに、うさぎの姿でエッグ型のチョコをプレゼントすると、皆、大喜びだった。
僕も大好きなうさぎになった気分で、楽しかった。
「アーサー、大成功だったね。うさぎってかわいいよね」
「瑠衣、大人のハロウィンも忘れていないよな?」
「うん? もしかして……また、うさぎになれるの?」
「あぁ、うさぎだ」
「うさぎになるのは、結構好きかも」
「そうか!」
その晩、僕は衣装部屋から絶対に出られない姿にさせられた。
ドラキュラ伯爵の言うことには、逆らえないよ。
「瑠衣、壮絶に……色っぽいよ」
「こんな姿……恥ずかしいよ」
「だが、君はうさぎは好きだろ?」
「それは……そうだけど……」
「恥ずかしいのなら、俺のマントに隠れていればいい」
うさぎはうさぎでも……黒いバニーガール姿に網タイツだなんて聞いていないよ。ご丁寧にお尻には黒いボンボンの毛皮の尻尾までついている。
「あ……っ」
そのまま衣装部屋で床に押し倒される。
ひんやりとした木の感触を覚悟していたのに、何故かふわふわだった。
そこは日中着ていた、うさぎの着ぐるみの上だった。
「気持ちいいか。これはラグにもなるんだ。だから役立つと言っただろう?」
「も、もう――っ」
「瑠衣の大好きなうさぎ尽くしだよ。さぁ……このドラキュラを満たしておくれ」
バニーガールの胸元を捲られ、胸の突起を露わにされ、そこを飴玉みたいに舐められた。
「ん……っ」
「瑠衣、Happy Halloween! I love you whatever you are!」
「も、もう――」
でも……僕も求めている。
どんな君でも愛している。
ハロウィン限定の戯れは、僕らにとって甘い甘い恋のエッセンス。
知っていると思うけれども、僕は君に特別甘いんだ。
だから今日は特別なデザートになるよ。
今日も……かな?
あとがき
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読者さまのコメントに瑠衣のうさぎが多かったので、あとドラキュラ伯爵も。
特に恋の駆け引きもなく、ただただ……アーサーが瑠衣を溺愛しまくるお話でした💕それが二人らしいなって。もう遠回りは不要ですものね。
この二人も変わらず、いろんな意味で元気で良かったです🤗アーサーは大型犬のように瑠衣にじゃれていますね💕
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