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冬郷家の春 2
冬郷家の客間には、朝日が降り注ぐバスルームがある。
そこにアーサーに連れて行ってもらった。
屋根裏部屋で生まれ育ち、執事時代も日陰の部屋で過ごした僕にとって、日の光はいつも贅沢なものだった。
「瑠衣、おいで、洗ってあげよう」
「え……それはちょっと」
「瑠衣は柊一くんや雪也くんの体を洗ったことがあるんだろう」
「それは幼い頃のお世話で」
「俺もしたい」
熱を帯びた青い瞳で見つめられては、一溜まりもないよ。
「ん……じゃあ君のしたいように」
「ありがとう。脱がしても?」
「う……ん」
「執事気分だ」
嬉しそうに僕の服を脱がすアーサー。
「そんな嬉々とした表情で服を脱がす執事はいないよ」
苦笑すると、アーサーは余裕の笑みだ。
「新しいタイプの執事だ」
「僕……専属の?」
「そう、君だけの俺だから」
「うん」
はらりとシャツを床に落とされると、1枚の花弁がふわりと舞った。
「ん? 昨日の花びらが紛れ込んでいたのか」
「そうみたいだね」
「だが、ここは散らないな」
胸元についた薄紅色の痕に触れられる。
「そこは英国で、君がつけた痕だよ」
「知ってる……瑠衣の肌がきめ細やかでついな」
「……嬉しいよ。いつも一緒みたいで」
「瑠衣は寛大過ぎる」
そのまま全てを脱がされて、浴室へ誘われる。
七色のタイルが輝く床で向き合うと、見慣れた裸のはずなのに照れ臭くなった。
「じっとしていて」
アーサーがシャワーの温度調整をし、優しく潤してくれる。
それから、たっぷりの泡のスポンジで体を熱心に辿られる。
マッサージするように、くるくると……
「あっ……」
「瑠衣の髪色が好きだ。漆黒、綺麗だ。睫毛も眉も……ここも」
「あっ」
下腹部の淡い茂みをまさぐられ、カッと頬が火照る。
「だ、駄目だ」
「どうして? 既に切なく震えているのに」
「それは……」
「欲情している瑠衣……可愛い。いつもは澄ましているのに」
上を向かされ唇を吸われる。
その間も下腹部をやわやわと揉まれ、どんどん感じてしまう。
こんな朝から、
こんな日の当たる場所で……
淫らな僕だ。
「どんなに乱れても、瑠衣の清潔感が変わらないな。そんな君が愛おしいんだ」
アーサーがしゃがんで、僕のものを口に含む。
「ん……駄目だ。君がそんなことしちゃ駄目だ」
「瑠衣、じっとして……静かに目を閉じて……そう、いい子だ。感じて……俺に感じて」
久しぶりに帰国した日本は春爛漫。
僕の心も体も、花が咲くように解放されていく。
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