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冬郷家の春 5
まるで白昼夢を見ているようだ。
僕の王子様が、僕を気持ち良くさせてくれる。
羽のようなタッチで体を愛撫してくれる。
甘いキスを繰り返ししてくれる。
少しも怖くない。
全部あなたが教えてくれたことだから。
「あ……あっ」
「柊一、痛くはないか」
「えぇ……気持ち良いです」
素直に告げると、フッと笑ってもう一度優しい波を与えてくれる。
「これ位か」
「海里さんも……気持ちいいですか」
「あぁ、最高だ。朝日の中で君を抱くのもいいな」
「恥ずかしいです……ですが、海里さんの髪に朝日があたってキラキラしていて……まるで銀の糸みたいに綺麗です」
「そんなことを言ってくれるのは、柊一だけだ」
「この髪に、昨日のお着物が良く似合っていました。明るい所で見たらもっとお似合いですね」
「ふっ、柊一、今日は余裕だな。もう少しだけ……深く挿れてもいいか」
「あ……はい」
海里さんを受け止めたまま、腰を浮かすと、圧迫感がぐぐっと増した。
「ん……っ」
「悪い、苦しかったか」
「いえ、海里さんで一杯です」
「可愛いことを。落ちないように、背中に手を回して」
「はい……」
初めて繋がった時のように、一緒に揺れた。
まるで乗馬をしているようだと、いつも思う。
駆け抜ける草原。
広がる景色。
いつもそこには海里さんがいる。
****
朝食を終えリビングに向かうと、執事服の桂人が大欠伸をしていた。
「悪かったね。待ちくたびれた?」
「瑠衣さん! 遅かったですね」
「ごめん……少し羽目を外し過ぎてしまったよ」
「ははっ、それは健康的で良いことです」
「桂人は? テツさんと仲良くしている?」
いきなり自分のことに振られて、桂人は照れ臭そうにそっぽを向いてしまった。
その人間味溢れる表情に、今は執事としてではなく、僕の従兄弟と対話したくなった。
「桂人、ありがとう」
「なんだよ? 急に」
「1年ぶりに会った柊一さん。とても健康そうで生き生きしていたから、ほっとしたよ」
「あ、あのさ、柊一さんは体があまり丈夫ではないようだが、前から?」
「いや、僕が執事をしていた頃はそんなことはなかったけれども……ご両親が亡くなった後……苦労されて弱ってしまったのかもしれない。だからとても心配なんだ」
「安心してくれよ。おれとテツさんで体に良い薬湯を出したり、薬膳料理を作ったりもしているから、日に日に健康を取り戻しているよ。丈夫な体を作っている最中さ」
「本当にありがとう。テツさんと桂人がいてくれなかったら……僕は心配で日本を離れられなかったよ」
桂人……僕の従兄弟。
血のつながりが僕を安心させてくれる。
「後、柊一さまは、おとぎ話がお好きだから……たまに魔法をかけてあげて欲しい」
「あぁ、それなら海里さんからもシツコク言われているよ。イースターのエッグハントをしかけろって……それって何だ? エッグが卵なのは分かるが」
あっ、そうか、今年のイースターは今日だ!
時差の関係で失念していた。
すると壁際で話を聞いていたアーサーが嬉々とした表情で、会話に入ってきた。
「いいことを聞いたぞ! 英国仕込みのイースターなら任せてくれ。桂人、外はいいぞ~」
「知ってる、昨日シタ」
「えっ」
くすっ、桂人とテツさんはワイルドだな。
もしかして昨日、外で……?
確かに君たちには野性味ある逢瀬が似合うよ。
「そ、そうか……俺たちも頑張らねば! なっ、瑠衣!」
「アーサー、何を言って? ここは日本だよ!」
「とにかく桂人、大人二人が横になれるピクニックマットを3枚用意してくれ」
「アーサー! まずはお花見だ」
「分かっているって。海里と柊一さんが花見に行っている間に、会場を用意しようぜ。花見とイースターをかけたガーデンパーティーをサプライズで企画しよう!」
アーサーの悪戯っ子のような表情。
憎めない。
可愛い……
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