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第1話
丘の上に大きな屋敷があった。そこには欲ばりな男がひとりで住んでいた。
男は親の遺産をうけついで、資産はたくさんあった。しかし、それだけでは満足できなかった。お金持ちというのは、えてしてそういうものだ。つきあいのあるまわりの人間も同じように裕福であるがゆえ、彼らよりさらにリッチな生活をしていないと、心が休まらないものなのだ。
実のところ、男はひとりものなので、そんなに大きな家は必要なかった。小さな家に引越して、質素な生活をしたほうが、気楽かもしれない。しかし男は、なんとしてもその屋敷に住みつづけなければならなかった。その界隈で、一番大きい屋敷に住んでいるというステータスをそう簡単に手放したくはない。見栄というやつだ。
ともかく男の所有する敷地は広大だった。大きな家屋のまわりには森がひろがっていた。そしてその奥には、大きくも美しくもない平凡な泉があった。
あるとき、その屋敷の欲ばりな男は、これまた欲ばりなお金持ち仲間と食事をしながら、こんな話を聞いた。
「最近、新しいビジネスをはじめたんだよ。これが、簡単にもうかって、笑いがとまらない」
「ほう、それはどんなビジネスなんだ」
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