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第2話
「奇跡の泉ビジネスさ。ほら、うちの庭に池があったろう。あの池にそれっぽい像をおいたのさ。うちの息子が彫刻家になるだなんていって、くだらない置物をしこたまこさえているのは知っているだろう。売れもしないし、物置がいっぱいになってきて邪魔だったのだ。そこで、なんとなく一番でかいやつをひとつ、あの池の中央に置いてみたのさ」
「へえ」
「そうしたら、像の前でたちどまって、お祈りしだすものがあらわれた。しばらくして池をみたら、けっこう小銭が投げこまれているんだ。定期的に池を掃除するだけで、なかなかの額になる」
「そいつはいい。うちの敷地にもたしか泉があった。おれも試してみるとするか」
次の日、男は、泉に置くための適当な像を買いに町へいった。しかし、どの店を見ても、大量生産の安っぽいオブジェしかない。
「うーん。小銭をたくさん投げ込みたくなるような、いい具合の像はないものか」
もっとも、あいつの息子の像だって、お世辞にもいい出来とはいえない。あんな像でいいのだから、どんなにくだらない像を置いたってかまいはしないだろう。しかし、どこかでみたことのある大量生産品ではそれっぽくない。できれば一点物のほうがいい。ひとつひとつ手作りのあいつの息子の像をわけてもらうのはどうだろう。いや、あんながらくたには、一銭も金を出したくない。さて、どうしたものか。
そんなことを考えていた男に、怪しげなおやじが声をかけてきた。
「そこのだんな、こんな像はいかがでしょう」
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