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第4話
「なんと、ほんものの泉だったというのか。そんなはずがない。この屋敷がたつ前からあの泉はあったようだが、奇跡が起こるなど聞いたこともない。しかし、がっぽり稼いでくれるなら、ほんとうに奇跡があろうがなかろうが、まったくどうでもいいことだ」
男は、評判となった自家製奇跡の泉に首をかしげながらも、投げこまれた大量の小銭をみてにんまりした。
「さて、そろそろ、回収にいくとするか。うへへ」
男は誰もいない夜中をまって、泉へむかった。
泉に到着すると、ちょうど、みすぼらしい身なりの親子が、手前に投げこまれていた小銭を一枚ひろったところだった。それをみつけて、男はどなった。
「おまえたち、人の金を盗もうとするとはけしからん。警察を呼ぶぞ。二度とここへくるな」
みすぼらしい親子は、一目散に逃げさった。
「まったく、ろくでもないやからがいるものだ」
男はぶつくさ文句を言いながら泉を見る。泉の中には、きらきらとまだたくさんの小銭がしずんでいる。男は大喜びして、お金をひろおうと泉に手をつっこんだ。しかし、なぜだかひろえない。お金に手は触れるのだが、まったく動かないのだ。
「こ、これは、いったい、なにごとだ」
するとどこからか声がした。
「盗みはいけません」
男はびっくりして、あたりを見まわした。しかし、誰もいない。
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