回避

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回避

教室にいる時間を最小限にするため、休み時間はトイレに駆け込んだ。 昼休みは湊がまた誰かに呼び出されていたため、逃げずに済んだ。 問題は下校だ。 用事があるからとかなんとか言って、誤魔化すしかない。 湊を避けようとそればかり考えて一日中過ごしていたら、普段の何倍も疲れた。 泉にもどうかしたのかと問われたが、れんげが言い渋るとそれ以上は追求せずにいてくれた。 親友の気遣いが嬉しかったけれど、やはりずっと誤魔化し続けるのは無理だろう。早くこの状況をなんとかしなければと焦るけれど、全く解決策は出てこない。 急いで帰り支度をしたものの、気づけば机の横に湊が立っていた。 おずおずと顔を上げ作り笑いを浮かべると、れんげが口を開く前に湊が早口で告げた。 「俺、用事あるから先行くよ。じゃあ」 「え? ……」 あっという間に教室を後にした湊を唖然としながら見送るが、一方で安堵している自分に気づいた。 湊を避けるたび、心が重くくすんでいくような気がして辛かったのだ。 慌てる必要がなくなったれんげは、ゆっくりと学校を出て、わざといつもより少し遅い時間の電車に乗り込んだ。 そのほうが知人に会うことも少ないだろう。 誰かと気持ちを通わせることがこんなにも難しいのだと、れんげは初めて知った。
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