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恋しちゃったぞ
鞄を担ぐ彼。
クラスメイトに微笑む彼。
授業中に黒板を見つめる彼。
教科書をめくる彼。
ノートを取る彼。
立ち上がる彼。
湊の行動全てが格好良く見えるのを思い出しながら、れんげはにやけていた。
「れんげ、顔が気持ち悪い」
泉に指摘され、我に帰る。
「好きになっちゃったか、成瀬君のこと」
「んぐっ、んっ! ごほごほっ」
泉の席を囲んでお弁当を頬張っていたれんげは、唐突な指摘にむせ返ったのと同時に、親友には隠し事はできないのだと知る。
「やっぱり。でもライバル多いよ」
多少の動揺を見せるれんげにも、泉はお構いなしに話を続けた。
「1年の頃から何人もに告白されてるけど、みんな断ってるみたい」
私は興味ないけど、と泉は卵焼きを口に入れる。
お弁当には合わないピーチティーをストローで吸い込みながら、れんげはほんの一瞬考え、すぐに顔を輝かせ身を乗り出す。
「じゃ、あたしが最初の彼女になれるかもしれないよね!」
満面の笑みを向けると、親友は諦めたように笑った。
「そのポジティブさ、れんげらしくて嫌いじゃないけどね」
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