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聞けない気持ち
中間テストの結果で要から首位を奪った湊は、以前にも増して告白される回数が増えたらしい。
今日も誰かに呼び出されたようで、れんげは泉とお弁当を広げていた。
「ますますモテるみたいね、成瀬くん」
「そう、だよねぇ」
泉の言葉に険はない。
それでもれんげの気分が沈むのは、湊を信じる要素が足りないからだ。
湊に釣り合いそうな綺麗な子や優しい女の子はたくさんいる。
湊の本性である少々荒っぽいところも、魅力的だと感じる子は少なくないかもしれない。
そうなれば自分の存在は忘れられて、他の子と付き合う可能性もあるだろう。
考えれば考えるほど、もうため息しか出なかった。
「ごめん、ヘコませるつもりじゃなかったんだけど」
「わかってる、ごめんね」
「成瀬くんの彼女はれんげなんだから、元気出して?」
泉に励まされるが、自分が彼女でい続ける自信もなくなってしまった。
そもそも湊にとっては売られた喧嘩を買ったようなもので、れんげに対して特別な気持ちなどなかったのだ。
一緒に帰ったりお弁当を食べたり、そういう恋人同士に見える瞬間も、虫除け的な意味合いしかなかったのだろう。
好きだと言われたことも、もちろんない。
結局れんげは、湊にとってなんでもない存在にすぎない。
その考えに辿り着いてしまうと、虚しくなった。
告白し玉砕しまくっていた日々より、よっぽど湊に焦がれている。
湊にとって一番近い存在であるはずなのに、彼の気持ちがわからない。
確かめれば済むことだが、自信のない今のれんげにはそれすら出来そうにない。
(私って、こんなにネガティブだったかな)
ちっとも前向きになれそうにない自分に呆れた。
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