噛み合わない私たち

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噛み合わない私たち

乗り込んだ電車の中で、制服姿の恋人同士がじゃれ合うようにしているのを見たれんげは、益々悲観して今日何回目かわからないため息を吐いた。 付き合うというのは、あの二人のようにキラキラふわふわした空気が漂う関係だと思っていたが、今の自分と湊はどうだろう。 湊の口から出てくるのは意地悪やからかいばかりで、れんげの口からは怒りや反抗ばかりだ。 いい雰囲気とは程遠い。 そもそも思いが通じ合って交際しているのではないから、湊にとっては口封じのための恋人ごっこであり、どうしたって本物のようにはなれないのだ。 湊を避けているのはれんげなのだから、仕方ないとも言えるけれど。 何の不安もなさそうに彼氏を見つめていた彼女の瞳が真っ直ぐで、そんな風に真っ直ぐ湊を見つめられない意気地なしの自分が嫌になる。 他人と比べても仕方がないのに、彼女たちが羨ましく思えた。 電車に揺られながら見る窓からの景色は、案外いつもと変わらない。 今日はなんとかやり過ごせたが、明日からはどうなるんだろう。 このまま湊を避けまくっていたら、自然消滅になるのだろうか。 「はぁぁ……」 望まない展開を作り出しているのは自分の意気地のなさだ。 ポジティブなだけが取り柄であったれんげだ。これほどまでに悩み、ため息を吐いて過ごしたことなど今までにない。 これこそが恋だと言うのなら、少々苦しすぎるのでは、と思いながら床に視線を落とした。 (どうしたらいいんだろう) 解決策など思い浮かぶはずもなく、れんげは電車を降り小さな駅の改札を抜ける。 電車通学と言っても田舎であるから、駅を出てもあるのはコンビニくらいなもので、人通りもそれほど多くはない。 れんげの家は駅近くのコンビニとは逆方向であるため、さらに人通りは少なくなる。 工場を取り囲むように作られた、高いコンクリート塀が50メートルほど続くこの道を通らなければ、帰ることができない。 暗くなると一人歩きはしたくない道だ。 けれど学校帰りのこの時間ならまだ明るく、散歩をしているお年寄りとすれ違うこともあるからそれほど怖くはない。 それでも足早に歩くれんげの背中を、思いもよらない声が呼び止めた。 「れんげ」
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