告白

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告白

塀を叩いた湊の手が、れんげの顔の横を通り過ぎ遠ざかる。その手を体の横に納めると、湊は片手で顔を覆った。 「……悪い。言い過ぎた……いや、言わなさ過ぎたか。隠さなくていい分、お前にはさらけ出し過ぎて……でも……」 道路沿いの塀にもたれ、湊は考え込んでいる。 塀の向こう側の工場から時折聞こえてくる、ガシャンという音が淡々と響くのを、れんげは黙って聞いていた。 「あのさ、ストレートに言わなくてもわかると思って、はっきり言わなかった俺が悪かった……ボランティアじゃないってのは、その……好きってことだろ」 欲しかった言葉は不意に聞かされた。 思いもよらない湊の言葉に、背けていた顔を勢いよく振り向ける。 本当なら嬉しいけれど、と見つめた湊は、つま先を見つめたまま目を合わせようとしてくれない。 そんな湊にれんげは一歩近づく。 「湊……」 「なに。見んな」 (照れてる、の?) 「湊……」 もう一歩、れんげは湊に近づく。 「だから、なに?」 それでも顔を上げようとしない湊の袖を、れんげは軽く引っ張った。ようやく顔を上げた湊と目を合わせ、思いを込めて伝える。 「もう一回、言って? お願い」 一瞬だけ寄せられた湊の眉間の(しわ)は、諦めたようなため息と共に消えた。預けていた背中を塀から離すと、湊は真っ直ぐにれんげを見つめる。 真剣な眼差しに見据えられると恥ずかしさはもちろんあったけれど、自分から頼んだ手前目を逸らすこともできず、れんげは湊の瞳をじっと見つめた。 沈黙の中、心音が大きく感じる。 「……お前のこと、好きだから」 湊の唇が紡いだ言葉で、あれほど苦しかった胸からつかえていたものが消えていく。欲しかった言葉はこんなにも簡単で、こんなにも喜びに溢れ、こんなにもれんげを満たしてくれる。 またもや溢れてきた涙を目に溜めたまま、れんげは湊に告げた。 「私も、湊が好き」 微笑んだれんげの瞳から、涙がこぼれ落ちる。 もちろんうれし涙。 ぐっと力強く手を引かれ、れんげは湊の腕に抱きしめられた。 れんげの髪を、湊の手が滑るように撫でている。 何度も繰り返されて、湊の香りに包まれながら目を閉じると、自分の全てが肯定されているように思えた。
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