紫陽花の咲く

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 気持ちをあげたいと直は言っていた。  だけどそんなのはノリさんと関係を結べる余裕があるから言えることだ。葵登には何もない。    ノリさんを好きだと気がついて、ダメだと思いながらも彼を想像して何度も抜いた。淡い恋心はいつしか劣情も伴って育っていった。ノリさんだけを想って、それ以外には興味がなかった。  想像よりやらしくて綺麗なノリさん。 「好きだ……好きだよ、ノリさん」 「葵登……」  童貞だからといって失敗はしたくなかったから、何度も頭の中でシミュレーションをした。ネットで調べて動画も見て、ほかの男の体には欲情しなかったけど、これはノリさんなんだと想像するだけで興奮した。たくさんたくさん射精した。  今腕の中にいて、恥ずかしい姿を見せているのは映像の中の誰かを上書きした偽物じゃない。本物のノリさんだ。  息が荒くなる。  勃ちあがる桃色の性器を口に含んでみたい。彼の味を知りたい。どんな匂いがしてどんな風に喘ぐのか見てみたい。  躊躇もなく下腹部に顔を埋めるとノリさんは跳ねるように飛び起きた。 「それは、ダメだっ」 「なんで。知りたい。ノリさんの全部を教えてよ」  歯を当てないように気をつけながら全長を口に収めた。「お」の形の口で上下に動かす。滑らかで血管が浮き出た前面を舐め上げ、先端のふくらみを口の輪でしごく。  可憐な鈴口を刺激してから細い筋の通る裏筋を下りてくると柔らかな袋も口に含んだ。  誤魔化しようもない声が漏れ、ビクビクと腰を震わせているノリさんは今まで見たどの姿よりも愛おしい。  何度もそれを繰り返すとノリさんは切なげな表情を浮かべながら、葵登の髪をギュっと掴んだ。 「気持ちいい?」  もう一度訪ねるとコクコクと頷いて「気持ちいい」とこぼした。  快楽に弱い人だろうとは思っていた。  どこか色っぽく人を誘い込む蠱惑的な人。  溺れたのは本望だ。  太ももに指を食い込ませ大きく開かせて、ささやかな蕾にも舌を這わせていく。舌先にノリさんの味がして夢中で皺の間まで舐めた。 「あ、ああっ、あ、」  止めどない喘ぎに葵登は密かに射精した。  下着の中はビショビショになっている。  蕾を開かせようとするとノリさんは小さく「ローション」と呟いた。 「そこの、棚にあるから……」  慌てて戸棚を開くと使いかけのローションとコンドームが置いてあった。今まで何度も目にしていた戸棚の中にこんなものが隠されていただなんて知らなかった。  全部持ってくるとノリさんは吹き出して「何回突っ込む気なの」と笑った。  
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