1昨年を振り返る

1/2
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/251ページ

1昨年を振り返る

「春休みももう、終わりねえ。私たち、4月から大学2年生になるわけだけど」 「そうですけど、なぜ、ジャスミンが今、私の家にいるのか疑問です」  私、朔夜蒼紗(さくやあおさ)は、目の前の女性が話している通り、4月から大学2年生となる。訳あって、大学生活二度目となるのだが、二度目の大学生活一年目は、いろいろなことがあって、私の望む平穏な大学生活とは言い難かった。  まさか、同級生が殺されてしまい、その犯人は、自分が勤めていたアルバイト先の上司だったとは予想できるはずもない。同級生、西園寺桜華(さいおんじおうか)の死によって、私の日常は平穏なものではなくなった。  狐の神様、九尾(きゅうび)と出会い、私は自分が特異体質で、特殊能力を持っていることを知らされた。世の中には、能力者と呼ばれる特殊能力を持った人間がいるようだ。  九尾との出会いから、どんどん私の周りには奇妙な存在が集まり始めた。九尾の眷属となってしまった元人間の翼(つばさ)君に、狼貴(こうき)君。死神の車坂(くるまさか)。  神様やら死神やらと出会って、事件に巻き込まれ、波乱に満ちた大学生一年目だった。 「それはあれよ。蒼紗が春休み中に一人で旅行に行って、連絡がつかなかったからでしょう?スマホに連絡しても出ないし、家には明かりがついていないし。ようやく、蒼紗の家に明かりがついたから、思わず、家に押し掛けたのよ!」  私が大学一年生で起きた出来事を振り返っている間に、ジャスミンがぶつぶつと文句を言っている。 「蒼紗、そいつのことは気にしない方がいいと思うぞ。気にしたら負けだといい加減、気付いたらどうだ?」 「九尾、それは言いすぎですよ。僕もそう思いますが、それでも口にしていいことと悪いことが」 「翼、すでに口に出しているから、お前も同じだ」  ジャスミンの言葉に、身も蓋もない意見が上がった。彼らが私の家に居候をしている、九尾と翼君、狼貴君の三人だ。  白に近い金髪に金色の瞳で、頭に狐の耳とお尻に尻尾が生えている少年の名前は九尾。彼は狐の神様らしく、私の平穏な大学生活を壊したのは九尾だと言っても過言ではない。彼のせいで、残りの二人の少年は犠牲になったともいえる。  残りの二人にも、ケモミミ尻尾が生えていた。うさ耳にウサギの小さな丸い尻尾、狼の耳にふさふさした尻尾。彼らはもと人間だったが、今では九尾の眷属となっている。翼君と狼貴君だ。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!