暇なのでちょっと儲けようかと

1/1
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ

暇なのでちょっと儲けようかと

プロローグ   妖艶な笑みを浮かべ、女神は黒髪の少女に言った。 「全てに復讐するのなら、助けてあげる」 退屈していた女神は、新しい暇潰しを見つけ嬉しそうに顔を歪ませた。私を楽しませてくれるなら、願いを叶えてあげると。 少女は意を決して、その手を取った。女神は満足そうに言う。 「あまりにも退屈だったら、いつでも観客席を立つからね」 これは少女の願いを叶え続ける物語。 そして女神の為の用意した演劇。 タイトルは、復讐劇。  通り過ぎていく風景を観ながら、私は欠伸をした。赤い髪が、窓から入ってくる微風で靡く。 現在私は電車に乗っており、地方から中央都市セントラルに戻っているところである。特急の為、停車駅は少ないがそれでも長い時間座りっぱなしは退屈だった。 「よっしゃー!俺の勝ちっ!」 と、乗客が少ない静かな車内で声が上がる。なんだ?と思って目を向けると、隣のボックス席で男2人がトランプをしていた。私はニヤリと笑う。いい暇潰しを思いついた。 「ねぇ、私とトランプで賭け事をしない?」 そう言って私は席を立ち上がる。 「ルールは簡単。トランプのハート、ダイヤ、クラブ、スペード各一枚のみを使うの。 その4枚から2枚選んで、ハートとダイヤ、クラブとスペードの様に色が揃ったら貴方達の勝ち。赤と黒のペアだったら私の勝ち。 ちなみに9回勝負」 掛け金は電車料金と同額なんてどう?挑発的な笑みを浮かべる私に、2人の男は顔を見合わせた。目で「どうする?」と問いかけ合っている様だ。 そして一人が口を開いた。 「カードを引くのはどっちだ?あんたか?」 「シャッフルは私、引くのは貴方達で。 ちなみにカードの出目は[赤、赤][赤、黒][黒、赤][黒、黒]で、お互いに勝率は五分五分よ」 私の言葉に、もう一人が「ならいいぞ」と言った。そしてデッキから4枚抜き、ちゃんと4種類と分かる様、柄を見せる。そして私に渡した。 「では2枚選んで下さい」 シャッフルして、見えない様に並べる。男たちはそれぞれが一枚ずつ選び、カードをめくった。 結果は、クラブとスペード。男たちはニンマリと意地の悪そうな笑みを私に向けた。      それから残り8回同様な事を繰り返し、結果は私の勝ちだった。そして「もう一回だ!」と何度も挑まれ 「お前、いかさましただろ!だってこっちの勝率は2/3のはずだろ!?」 負けた男たちがわめいてる。私は首をわざとらしく傾げた。 「勝率が2/3ってどう言う事?」 「お前がさっき、カードの出目は[赤、赤][赤、黒][黒、赤][黒、黒]だって言っただろ。 だが[赤、黒][黒、赤]は同じ事だから、実際の出目は[赤、赤][黒、赤][黒、黒]で、俺たちの勝率は2/3のはずだ!!」 キッと睨む相手に、私は「そーなんだ〜」と他人事の様に返す。ニコッと作り笑顔を向けて 「けど、結果が全て。2人とも、2万ウェザー払ってね」(※100ウェザーで菓子パン1つ買えるくらい) 「クソッ!」と嘆く2人に、私は心の中でバーカと呟く。 確率の計算を間違えてる、と。  ようやく目的の駅に到着。私の懐は臨時収入により暖まった。上機嫌な私を、2人は恨めしそうに見ながら去っていく。 「ナギ」 さてと、行くかっと伸びをした時、背後から声をかけられる。聞き覚えのある声に振り向くと、思った通りの人物がいた。 「ルカ、なんだか久しぶりだな」 「二日ぶりで、全くそんな風には思わないが」 呆れた様に言うこいつは、ルカ。溜息をつきながらも、車のキーを見せる。 「あっちに車を停めてある。このまま向かうだろ」 サンキュー!と飛び付くと、ルカは嫌がりながらも照れていた。  自動運転で目的地に向かっている時、私はルカに聞いてみた。 「ねぇ、正しい確率を知っていたのは誰だと思う?」 そう、それは先程の賭けについでだ。ルカは 「"知っている"ならお前だろ」 と可愛げなく言った。流石に分かったか。ちなみに「幾ら勝った?」と聞かれて「2万」と舌を出して答える。 「馬鹿な奴等だ。カードを表にしてやってみれば、一発で分かる」 4枚の中から2枚選ぶ。 一枚目にもしハートを引いた場合、残りはダイヤ、クラブ、スペード。つまり赤1枚、黒2枚。男たちが勝つ確率は1/3。逆に私の勝率は2/3。9回勝負でやれば、だいたい勝てる計算だ。 「暇なので、ちょっと儲けようかと」 テヘペロとやったら、ルカが汚物を見る様な目をして来た。が、気にしないでおこう。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!