ほんと頭が痛いよ、

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ほんと頭が痛いよ、

 「で、話はまとまったのか」 ルカはずっと聞きたかったであろう、私の任務結果について聞いて来た。私は溜息混じりに答えてやる。 「土の国以外は協力してくれる事になった」 「やっぱり土の国は無理か」 現在、私は火炎の国にいる。先日まで異世界に行っていて、その世界にある火の国、水の国、風の国、土の国に、とある協力を依頼していたのだ。 「世界転移装置が田舎にしかないから、面倒なんだよな」 城の中にも作ればいいのに。そう呟くが、当然無理だと理解はしている。 「馬鹿デカすぎるし、利用されて攻めてこられたりでもしたらって、理由だったな」 ルカの言葉に頷く。 そう、高位術式で作り上げられた世界転移装置は、ものすごく巨大だ。理由はかなりのエネルギーを使用するためのコアがでかいから。そしてもう一つ理由があり、もしハッキングなんかされて、敵が城内に侵入してしまう可能性が少なからずあるからだ。 「昔は隣国と喧嘩して、それから宇宙からの侵略を警戒して、けど宇宙人からの侵略じゃなく、異世界からの侵略の方が先ってね」 可笑しそうに笑う私に、とルカが睨んでくる。ハイハイ、分かってますよ。 「ほんと頭が痛いよ、アルカナの奴等」 そう呟くのと同時に、目的地である火炎の国の城、紅蓮城に到着した。  執務室に行くと、すでに部屋には知り合いの中尉がいた。 「レイ中尉、久しぶり」 「少佐、任務お疲れ様でした。およそ半年ぶりね」 敬礼するが、すぐに口調を崩す。 「異世界でも暴れてたって聞いたから心配してなかったけど、元気そうでなによりよ」 ちょっと待て、暴れてたって酷くない?私はジト目でレイを見る。レイは知らんふりをして、早々に本題を切り出した。 「アルカナに動きがあったわ」 「もしや大地の国で何かあった?」 頷くレイに、やっぱりかーと項垂れる私。 「土の国の事件から、おそらく繋がってると予想はしていたが…」 「だから他の国も協力的だったのかもな」 まぁ、当然他の理由もあるが。 帰ってきて早々にやる事が山積みのようだ。…そう、それを表すかの様に机に書類が積まれているが、今は目を逸らそう。 「ちなみに、一番上にあるのが最重要だと思うわよ」 レイは苦笑して一枚の書類を指し示す。恐る恐る見ると、私は目を見開いた。 「アルカナが来年の世界会議に参加決定!?」 「落ち着きなさいよ。国として認められたのではなく、研究成果を発表する為の参加よ」 それがおかしい。なにせアルカナがやっている研究は、 「人工能力者組織アルカナ、奴等は人為的に能力者を作っている組織だ。バランスが崩れるぞ」 それは真理を恐れぬ、愚かな行為。 私は書類をつい握り潰してしまった。 『私は必ずアルカナを潰す』 そう呟いて。
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