トクベツ

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トクベツ

「おい、それ、校則違反だろ?」 サトヤに言われ。 とっさにつま先を。 タオルで覆った。 体育祭練習で。 裸足になるなんて。 ちょっと考えれば。 分かったことなのに。 気を抜いて。 落とし忘れた。 サトヤの方を見れずにいると。 向こうも興味を無くしたのか。 それ以上は。 何も言ってこなかった。 そもそも。 特に喋る間柄でもない。 見た目は真面目そうだけど。 わざわざ女子の校則違反を。 先生にチクるやつだろうか。 つま先を目一杯丸めて歩きながら。 先生の目をやり過ごし。 やっと足を洗って。 靴を履いて。 ほっと息をつくと。 「そんな必死に隠すなら、  校則違反なんかしなきゃいいじゃん」 「うるさいなあ」 今度は言い返してやった。 思いっきり。 そっぽを向きながらだけど。 それに対して。 また無言なので。 ちらりと盗み見ると。 不思議そうな顔で。 じっと見つめられていた。 「サキって、意外とこう、  やさぐれてんだな」 舌打ちして。 逃げた。
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