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「良いかいシルリア。くれぐれも人前で魔法を使ってはいけないよ」
「何故ですか?お母様」
今はもう会えないお母様。魔法を使えるようになったばかりの頃の私に、お母様は丁寧に教えてくれた。
魔法は誰にでも受け入れられるものではない。
中には疎ましく、おぞましく思う人もいる。そういう人達の中には、『魔法を使う者』を異端だとして排除しようとする者がいる。
その人達に見つかれば、何をされるか分かったものではない。
それどころか、命すら奪われるかもしれない。
そう言い聞かせくれたのに、12になった私が迂闊にも外で魔法を使ってしまったことでそんな人達に気付かれてしまった。母は必死に時間稼ぎしながら私を逃がした。
「逃げなさいシルリア!貴女だけでも生きるのです!!」
「そんな、お母様も一緒に!」
「私は貴女が逃げられるよう時間を稼がなければなりません。さぁこれを持ってお行き!決して後ろを振り返ってはいけません!!」
「………っ!」
私は涙を溢しながらも、母から差し出された一冊の書物を受け取って後ろを振り返らずに走り続けた。無限とも言える程の森の中を、ただひたすらに走り続けた。
いつしか私は、小さな泉の畔に辿り着いた。そこで体力も気力も尽きた私は、気を失うように倒れた。
でも、そんな私を助けてくれたのは野生の動物達だった。
彼らは力尽きている私を、あの手この手で落ち着ける場所に連れていき、水や果物を与えてくれた。更には森や泉の聖霊までもが手を貸してくれた。
そうして今、私は17となった私は『畔の魔女』として動物達と静かに暮らしている。
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