プロローグ

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森を歩き、薬草を探していればガサガサと動物達が寄ってくる。小鳥やリスなら私の肩に乗り、狐や鹿なら頭を撫でて欲しいかのようにすり寄ってくる。 不思議とこの森の動物達は、木の実や魚を主食にしていてお互いを襲うような事をしない。現に今、私が来ていると気付いて人懐こくすり寄ってきたのは、大きな身体をした熊。 シルリア「クァーノ、お前少し食べ過ぎだ。まだ冬眠には程遠いだろう」 クァーノと名付けた熊を苦笑しながら撫でた後、陽当たりの良い場所で休憩にすることにした。私が地面に座ると、クァーノは私の後ろにピッタリとくっついて 私を囲うように丸くなった。 背もたれ代わりになってくれたクァーノに礼を言ってもう一度頭を撫でる。そして鞄から本を取り出し、小鳥のさえずりと草木の揺れる音を聞きながら読書に入る。 それは母から渡された書物で、我が一族について記されたものだった。 私の一族は先祖代々強い魔力を持った家系の末裔で、魔女の中でも別格の強さらしい。代を重ねる事に弱まってはいるものの、私は先祖返りのようで近年では考えられない程の魔力を持っていると書かれている。 それこそ、あらゆる面でその気になれば国を揺らがせる程の才能。 シルリア「(まぁ、こうしてこの子達と心を通わせられて、傷を癒せるだけで十分だけど………) ん…?珍しいね、あなた達が来るなんて」 クァーノの頭を軽く掻いてやっていると、三つの光の球が私の前に飛んできた。光の正体は虫などでは無く、この森に住まう妖精。 シルリア「何かしら?」 『タスケテ、タスケテ、アゲテ』 シルリア「助ける?また迷い込んだ人がいるのね………」 溜め息をついた私は、書物を鞄にしまって立ち上がるとクァーノも気付いて立ち上がる。茂みからは大きな狼が現れ、私の前で止まると背中に乗るように見上げてくる。 シルリア「ありがとう、グン。また乗せてもらうわね」 長い銀髪を高い位置で一本にまとめ、大狼『グン』の背に乗って精霊達に道案内してもらう。そうして暫し森の中を進んでいくと、バラバラになった装飾された馬車と2頭の白馬、そして傷付いて気を失っている従者と主人と思われる男が倒れていた。
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