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シルリア「貴族ね………起きる前にやってしまいましょう」
グンから降りて二人の傷を確認すると思いの外深く、傷で刃でバッサリと斬られたようなものだった。むしろよくまだ生きているものだと思わせる。
シルリア「手当てが先か………グン、クァーノ、周りに人はいないか見てきてちょうだい。居たら追っ払って」
二匹は私の言葉を聞くと、すぐに駆け出して周辺の見回りに出る。私は二人に右手をかざし、魔力を込めて治癒魔法の魔法陣を形成。陣から溢れ出す淡い緑の粒子で二人の傷を癒していく。
そしてある程度治癒出来たら、治癒魔法を左手に引き継ぎ、空いた右手を大破した馬車へ向けて少し違う魔法を発動する。治癒魔法に近いけど、今度のは壊れた物を修復する魔法。
壊れた馬車と辺りに散らばった破片が浮き上がり、馬車を元通りに修繕していく。足りない部分は、魔力で再構築して埋める。
到着してから10分程で治癒も修繕も終わり、戻ってきたグンとクァーノの手も借りて二人を馬車に寄り掛からせ、車内にあった毛布を掛ける。幸い、目覚める様子は無く、すぅすぅと寝息を立てていた。
シルリア「これでよし。ついでに店の方に行くかな………」
グンの背に乗ってクァーノには森へ戻るように指示し、二人が目覚める前にその場を後にする。車内を見た所、王家の紋章があったから目覚めたら面倒事にしかならない。だから起きる前に逃げる。
逃げるついでに、町にある自分の店に向かう。人里離れた森に住んでいるけれど、やはり森では手に入らないものがある。それらを得るためにも、定期的に町で小さな修復業を営んでいる。
修復業にしたのも至って簡単で、私が一番得意としている魔法だから。尤も、魔法で直してるなんて町の人達は知らないけれど。
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