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「こんにちは!セラフィム化粧品です!只今新しい洗顔料のサンプルを配布しております!」 毎度の台詞をいいながら、横を通り過ぎようとする彼女に手渡す。 すると、突然でびっくりしたのか、彼女は抱えていたランチボックスを落としてしまった。 「あっ……」 小さく呟き、慌てて屈む彼女。 僕は彼女より素早くランチボックスを拾い、謝りながら手渡した。 「大丈夫ですか!?……壊れてないといいけど……驚かせてしまいましたね、すみません」 「そんな。こちらこそ、しっかり前を向いてなくてごめんなさい。私、いつもうっかりで……」 そう言って、照れながら笑う彼女は、近くで見るととても可愛らしかった。 でも遠目で見たとおり、肌トラブルに悩まさせているような跡がある。 頬と顎にニキビがあり、厚ぼったい前髪の下にも多分同じように出来ていると思う。 「いえ、突然話しかけた僕が悪いんです。あの、これ、さっき渡そうとした洗顔料のサンプル。ぜひ、使ってみて下さい!」 「洗顔料……あ、あの、私のニキビ、やっぱり目立ちますか?」
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