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しかし、その後、僕は雛田さんに会うことが出来なかった。
正確には、会いに行ったけど居なかったが正しい。
雛田優子さんは、あの日……僕と夕食に行った次の日、三星商事を辞めていたのだ。
そうとは知らない僕は、毎日、偶然会えないかな?なんて思いながら彼女を探していた。
意味なくエレベーターに乗ったり、ロビーでキョロキョロしたり。
それでも会えなくて、とうとう会社に行ってみた。
そして……知ったのだ。
僕はダメ元で雛田さんの退職理由を聞いてみたが、三星商事の誰もその理由を知らなかった。
もう、雛田さんを探す手がかりはない。
会社の人は、連絡先くらいは知っているだろうが、それを赤の他人に教えることはないだろう。
また会える、なんてどうして思ったんだろう。
こんなことになるならあの日、連絡先を聞いておけばよかったと、僕は激しく後悔した。
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