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初夏のさわやかな風が吹き抜けるオフィス街の一角。
そこには、一面に芝生を敷いた公園があって、昼休憩のOLさん達が昼食を食べにやって来る。
春から化粧品会社へ入社し、企画販売促進部へと配属になった僕、上杉有は、販促部の先輩と共に新商品のPRをしていた。
「こんにちは!セラフィム化粧品です!只今新しい洗顔料のサンプルをお配りしております!どうぞ!」
「あ、はい、どうも」
「ありがとう」
二人連れの女性達は、軽く頭を下げて受けとると「わ、これ、すごく可愛いね」なんて言いながらバッグにしまう。
それを聞いて僕の頬は緩んだ。
企画会議の時、いくつもあったデザイン案の中から選ばれたのは、なんと僕のものである。
可愛らしさと大人っぽさが同居した薄紫のパッケージ。
考えに考え抜いて、女性が興味を惹かれるデザインにした……つもりだ。
そんな経緯もあってか、新商品のPRには気合いが入っていたのだ。
「どうぞ!よろしくお願いします!」
僕はどんどん声を掛けていき、手渡していく。
手元のサンプルの減り具合も早く、お昼休みでもう終了してしまうかな?
そう、思った時だった。
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