昼星の駆ける空

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お弁当を食べる学生の集まる昼間とは、全く違った様相を呈す屋上はいつもよりずっと広く見えた。 その中に、ポツンと佇む彼だけが変わらな かった。 「過ぎちゃうよ、完全下校時刻。」 他人から話しかけられるだなんて夢にも思わなかったようで、ビクッと振り向いて彼は答えた。 「顧問の先生から許可は貰っているんだ。」 見ると、彼の側には天体望遠鏡が置かれている。学生が小遣いで買うには難しいものだろう。よく知らないけど。 「うちの学校に天文部なんてあったっけ?」 「正確には地学部。といっても部員は僕一人だけどね。」 「部員一人じゃ承認してもらえないでしょう。先輩は?みんなは?」 「今年入部したのは僕だけ。先輩はみんな辞めた。星なんか眺めてたって大学には入れないんだってさ。寂しいよね。」 そう言いながら彼はそれほど寂しそうに見えない。むしろ自分と星だけの空間を楽しんでいるように見えた。  「ねえ、吉田。星に興味ない?今日は良いものが見られるんだけど。」 だから、天体観測に誘われるだなんて完全に予想外だった。 決して嫌いではないし、浪漫を感じないと言えば嘘になる。文系だって星を観測する権利はあるはずだ。 私は首を縦に振った。
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