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「あれが夏の大三角形。あの明るい星、アルタイルって言うんだけど― と、あの青く光る星を繋げて―。」
子供のように目を輝かせる彼を見るのは初めてだった。星の知識がほとんど無いと言っていい私にも懇切丁寧に説明してくれる。
「あの有名な星座、なんて言ったかな、
シリウス?は見えないの?」
「シリウスは星座じゃない、一つの星の名前だよ。それに冬に出る星なんだ。」
呆れられた、と思った。でも彼はそれほど気にしていないらしい。
「冬の星は今の時期、昼間に出ているんだ。
誰にも見てもらえなくったって、確かに。」
「それは知ってる。」
金子みすゞの詩にあった。
『昼のお星はめにみえぬ
見えぬけれどもあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ』と。
「じゃあ、これは?
星の放つ光って何万年も、いや何億年も昔の光なんだ。」
星の間を移動するには光の速さで進んでも気の遠くなるような時間がかかる。
冷静に考えたら当たり前のことだけど以前の私はそんなことも考えなかったから素直に感心してしまった。
私たちの眺める星空は過去の記憶で出来ている。さらに言うと星たちの死骸の山だ、と言うことは後で調べて知った。
そんなことを言わないでくれたのは彼の優しさだろうか。
「人が死ぬと星になるって言うよね、私たちの星が地球の人たちに見てもらえるのって何年後になるんだろうね?」
そんなこと言わなければ良かった。
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