01 俺には恋愛フラグすらない

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2020年7月16日 結局。 俺は、連絡先を交換してしまった。 陽さんとではなく、元気くんと。 マニュアルを拾っていなければ。 俺はきっと勘違いしただろうな。 もしかしたら春が来るのではないかと。 もう夏がくるのに。 いや、夏が来てもいいんだけど。 俺には春も夏も訪れない。 それだけ闇は深いんだ。 ああ、よかった。 勘違いしないですんで。 でも、惚れているわけじゃない。 ひたすらに。 ひたすらに。 寂しいんだ。 三十歳童貞。 どうでもいいくらいにかなしいです。 どうしょうもないくらいせつないです。 でも、元気くんが陽さんのLINEアドレスを教えられたとき。 「元気ですか?」 と通知を送りました。 そのとき中島みゆきさんの「元気ですか?」という歌?が流れた。 いろんなことわかっている。 なのに通知を送ってしまった。 元気かと聞いてしまった。 元気ですか?と聞かれてしまった。 わかっている。 わかっているのに。 遠回しに嬉しかった。 遠回しに探りをいれる俺。 皮肉もなく好意もない。 嫌な俺。 嫌われるのは当たり前。 何故かへこむ自分。 電話が来た。 陽さんから。 「あの……純さん。  元気とキャッチボールしてくれませんか?」 「キャッチボールですか?」 突然なんのことかと思った。 話を聞くと。 元気くんはお父さんとキャッチボールがしたいらしい。 友だちは、みんなキャッチボールをしてもらっている。 でも、元気くんにはお父さんがいない。 だから、その代わりになって欲しいらしい。 断る理由はなかった。 「いいですよ」 俺はそういった。 今度の日曜日。 俺はキャッチボールをしに病院に行く。
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