Friends ―朱里くんとタコちゃん―

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 俺が言った言葉を忘れずにいたようで、派手なメイクではなく彼女に良く合うナチュラルなメイクをするようになった。  肌の手入れもちゃんとしているみたいだ。 「最近、キレイになった?」  どうやら彼女の前ではどうやら心の声は言葉になってしまうようだ。  気が付けば、開いた口からそんな言葉が出ていた。  筒島さんは、俺の言葉に一瞬きょとんとしていた。  ―――そしてキレイな顔で笑った。 「朱里くんも最近、表情豊かで良くなったと思うよ。」  キレイな顔で笑った。  最初あった時は違う、彼女に似合う笑顔で。  もしあの時、追いかけていなければ。  誰かとこうやって笑い合うこともなかっただろう。  人と関わりを持たなかった俺だけど、こうして誰かと笑うのは悪くないかもしれない。 「あとはお兄さんとも素直に話してみればいいと思うんだけどなぁ。」  ぽそりと彼女が言った言葉を俺は聞き逃さなかった。  よりによって、なんでアイツのことが出てくるんだ。 「筒島さんは兄貴と会ったことないから言えるんだよ。」  兄貴のことを考えると今でも胸の奥がムカムカする。  黒いものが体中にどっと広がっていくそんな感じだ。 「あの人は見ていてイライラするんだ。」  いつもヘラヘラとしているとことか  俺と違って、努力しなくても太らない体質とか  全然頼りないのになぜかモテるとことか  要領が悪いくせに必死なとことか  やるときはやれるくせに全然本気出さないとことか  兄貴の嫌いなところを上げていると、筒島さんは呆れた顔をしてため息をついた。 「それってお兄さんの事、嫌いじゃなくて結構好きなんだと思うけどな。」  嫌いじゃなくてだって?  冗談じゃない。  あんな奴、大っ嫌いだ。  と、筒島さんにいったところでどうしようもない事だろう。  一人っ子の彼女の感覚は俺とは違う。  でも……確かに少し思うところはある。  アイツに言ってやりたいことを吐き出したらどうなるんだろう。  きっとそんなことはないだろうけど。  もしあるとしたら…… 「向こうが話したいと言ってきたら、少しは考える。」  思わずボヤいた俺の心の声はまたしても、筒島さんに筒抜けになってしまった。  そんな俺の言葉に「素直じゃななぁ。」なんて、彼女は笑って言った。
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