Friends ―朱里くんとタコちゃん―

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 いつもならこの時間は1限目の授業中で、図書館にいる人は少ないのだが今日は俺以外にも珍しく返却窓口に人がいた。  赤いリボンを付けた女の子。  何冊か本を返していたようだが、どうも一冊足りないらしくカバンの中に入っていたものを荷物置き場にいくつか出していた。  しばらくすると奥からその目的の本が見つかったようで、それを窓口の司書さんに渡すと慌てて出した荷物をしまいその場を立ち去って行った。  ……そこで面倒なものを見つけてしまった。  さきほどの女の子が本を返した時に出したのだろう。  雑誌が荷物置き場に置いたままになっていた。  俺は窓口の司書さんにそれを渡そうとしたが、それが俺も顔を知っている司書さんだったのとちょうど電話が鳴ったらしくタイミングがよくなかった。 「ごめん、(あか)くん!先に席取りに行ってて。返却はそのあとでね。」  兄貴と同級生で同じ名前のその人は慌てて奥の事務室へ行ってしまった。  確かにいつもの状況なら、それでもかまわなかったけど……  手に持った雑誌を見て、振り返る。  そんなことをしていたら、さっきの女の子が見えなくなってしまう。  きっとそうなれば司書さんだって大変だろう。  ……今追いかければ、間に合うか。  俺は目立つ赤いリボンを目がけて歩き出していた。
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