Friends ―朱里くんとタコちゃん―

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 食堂の方に向かっていったのは見えたが、そこからどこへ行ったのか見失ってしまった。  リボンしか見てなくて、顔や服装が思い出せない。  しかも……  食堂にたまたまいた何人かの学生たちが俺を一瞬見ると目をそらした。  その中にはじっと見ているやつもいたが、その連れのやつがコソコソと何か話すと目線をそらした。  先ほどまで少し賑やかだった食堂がシーンと静まる。  ……そうか。  もう大学(ここ)でも俺の噂は広まっているのか。  改めてそれを思い知らされる。  これだから嫌だったのだ。  教室以外の人が多いところに来るのは。  ぽつんと  ただ立ち尽くすことしかできない  ―――ここは俺の居場所じゃない  静かになった食堂を逃げるように出ようとした。  そんな時  静かだった食堂の奥から華やかな女の子の歌声が聞こえてきた。  すごくキレイな歌声だ。  あまり音楽を聴かない俺でも、その言葉ひとつひとつ、それに合わせたギターの音とリズムに惹かれる。  いったい誰が歌っているのだろう。  歌声はどうやら食堂のテラスの方から聞こえた。  俺はその音が聞こえるほうへ走り出した。
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