Friends ―朱里くんとタコちゃん―

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 音の正体は  先ほど図書館にいた赤いリボンの女の子……のスマホから流れていた。  本人はイヤフォンで聞いているつもりなのだろう。  取れて外に流れていることに気が付いていない。  首をかしげて、スマホの音量を上げていた。  まるでまぬけな兄貴みたいだ。  見ているこっちは、呆れるしかない。  近づいても、こちらに気が付いてない。 「図書館の荷物置き場にあったやつ。あんたのだろ?」  そう言って、テーブルの上に雑誌を置くとようやくこちらにその子は気が付いたようだ。  雑誌を見るとイヤフォンをとり、そこでどうやら自分のスマホの音が外に漏れていたことに気付いたようで慌てて音を止めていた。 「そうです!私のです!あ、ありがとうございます。」  そう言って、その子は顔をあげた。  そして俺の顔を見て固まった。  ……やっぱ、この子も俺のことを知っていたのか。  そうだよな。  こんな派手な恰好のやつ。  道管朱里以外にいない。   「……何?やっぱこの髪の色とか、目の色とか変か?」  いつもなら心にとどめておく言葉が口から流れ出る。  こんなことをこの子に言ったところで何になるわけでもない。  だが、その子は瞬きを何回かしてガシッと俺の手を掴んだ。 「すごくキレイ!髪も目も声も!地毛なんだね、それ!」  メイクでさらに強調されたキラキラした大きな目に圧倒された。  それに  この子は今なんて言ったんだ?  キレイ?  自分に対して使われることのなかった言葉。  人生でそう言われたのは、初めてではないだろうか。  こういわれたときはどう返せばいい?  今までこんなこと言われたことがなかった。  いや、そういえば弟の紫音(しおん)以外と話すこともあまりない。  こういう時はどうすればいいんだ。  そう考えていると、彼女のスマホが目に入った。
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