Friends ―朱里くんとタコちゃん―

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 筒島さんは変にまじめだ。  雑誌も付箋がいっぱい貼ってあったが、どうやらこれは彼女にとってのおしゃれの教科書なのだろう。  それを見ては化粧や服装を研究しているみたいだが、どうも彼女は自分に似合う物が分かっていないようだった。  他人のことは声を聞くだけでだいたい分かるくせに。  べつに俺もそういうのに詳しいわけではないが、ちょっとずつおしゃれの勉強会に付き合ってやる内にいろいろ話すようになった。  オレの家族の事。  すぐに喧嘩を売られてしまうこと。  強く見せるために着ている赤い服のこと。  そして、筒島さんのことも聞いた。  仲のいい大学の教授の事。  親友の姫凛桃のこと。  ……気になるという親友のバイト先の人のこと。  どう聞いてもいい所が見当たらないその人のどこがいいのか、俺には分からない。  でも楽しそうに話す筒島さんにとっては特別な人なんだろう。  そうやって、彼女と一緒にいるうちに俺は少し変わったそうだ。  紫音が言うには前は暗い顔して大学へ行っていたのが、最近はどことなく楽しそうに見えるらしい。 「朱里兄さんが少し笑うようになって父さんや母さんも安心しているんだよ。」  そう言う紫音がすごく嬉しそうで  親どころか弟にまで心配かけていたのかと、複雑な気持ちにもなった。  いや、俺だけじゃない。  筒島さんも変わった。
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