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星降る夜には、よく友人とこうやって空を見上げている。
そして、友人は決まってあの流れ星達は、いったい何で出来ていて、何処から来たのだろうと私に問うのだ。
私が毎度の如く、アレは極小の宇宙屑で、この星の大気に衝突し―――あぁ、ダメだ。もう聞いちゃいない。
友人は君の話って長いし、よく分かんない。と言い、そっぽを向いてはまた違う、よく分からない事を言い出す。
これもまたいつもの事だ。
土星の周りを浮かんでいるあの環っかってさ、乗って歩けないのかな。
1度でいいから歩いてみたいよね。
叶うなら走ってもみたい。
ほら、訳の分からない。
土星の輪に乗れるわけが無い、しかし私がそう言うと、君は夢が無いねぇ。と友人は悲しげな目で私を見るのだ。
友人は他にも、行ってみたい星や、やってみたい事を矢継ぎ早に話しだす。
それは、こうやって2人で星を見る度に行われる儀式のようなもので、そして何より友人は私に返答を求めない。
自分の話したい事を話したいだけ、話す。今更直せと言っても決して直らないであろう友人の悪癖だ。
しかし、今日は何故か私の中に僅かな悪戯心が芽生えた。
私は友人の意表を突くべく、彼の一人談義を大きな咳払いで中断させ、こんな事を言ってみた。
なら、将来住むならどの星が良いんだい?
何て事は無い、ちょっとした質問だ。
しかし友人は意外なほど長考した。
全く喋らず、空を舞う見事な流れ星に目を傾ける事もなく。腕を組み、ただひたすらに考えていた。
友人が再び口を開いたのは、星が一通り流れ終え、静かな暗い空が戻ってきた辺り。友人はそれを待っていたかのようなタイミングで喋りだした。
火星かな。移住するなら火星が良い。
ほう、それは何故か?
私は尻に敷いていたハンカチに着いている砂埃を叩き落としながら問うた。
当然、空気があるからだよ。それに、光と水も。これが無きゃ満足に星も見れないだろう?
なるほど、確かにそうだ。ゴワゴワした探査服を着たままでは、安心して空を見上げていられない。私は友人の意見に同意し、帰り支度を進めた。
君はどうだい、移住するならどの星が良い?
友人は私の背中に問いを投げかけてくる。ここで答えなければ、帰り道しつこく聞きまとわれる事だろう。
私は暫し考え、答えを出した。
私は当然地球だな。
そこで1人静かに星を眺めるとしよう
地球にも火星同様に空気や光がある。そこでなら問題無く星が見れる。
口数の多い友人も隣に居ない事だし。
しかし、友人は私の答えに良い顔をしなかった。
あの星はダメだよ、とまで言い出した。
それは何故だい? 私がそう問うと
「明る過ぎて、見えない物が多過ぎる」
友人の答えに納得した私は、諦めて友人と共に火星へいずれ移ることを決めたのだった。
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