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俺の叫びが届いたのか、窓から聞こえて来た音が止んだ。後輩のいびきも止まっている。
時間が停まったような静寂。
「良助……お前、起きたのか?」
声を震わせながら布団から顔だけ出した時、鼻が擦れるほどの位置に女の顔が存在していた。
その顔はフェイスブックに表示されている顔そのもので、血走った目で俺を見下ろしている。
叫ぼうとしても声が出ない。心の中で『許してくれ』という言葉をお経のように何度も繰り返し唱えるが、金縛りは解けない。
首に何かがゆっくり巻き付いている感触。それに気付いた時には既に、俺の首は強い力で締め上げられていた。
生まれて初めて感じる死へ繋がる激痛に頭の中が真っ白になっていく。
静寂の中、最後に耳元で響いたのは電話越しに聞いたものと同じ声だった。
「ユルスワケナイデショウ」
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