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「いや、IDを持ってる持ってないの前に、百貨店に忍び込める訳ないやろうが! 警備員の数、どれだけ多いと思ってんねん!」
俺が呆れたようにそう言うと、康徳は両腕を組みながら「それはどうかな」と胸を張った。
「なんやねん、なんかええ作戦でもあんのか? ってか、警察沙汰になるようなことは絶対嫌やからな」
「大丈夫やって! 武丸屋が一番混む夕方に入店して、トイレとかに潜んでたらええんや」
「閉店前にトイレもチェックするやろ。監視カメラだってあるやろうし、そんな甘くは無いと思うけどな」
俺が眉間に皺を寄せながらそう応えると、康徳は「まぁトイレが無理なら試着室でもええと思うけど」とあっけらかんとした様子で言葉を返してきた。
「見つかったら見つかった時や。そんとき考えたらええねん。警備員もまさか高校生がトイレに潜んでるなんか思わへんって。それに、このキャスが成功したら、お前のフォロワー2倍、いや10倍にだってなるぞ」
能天気な康徳の話を聞いていると、こちらまで能天気な考えになってきてしまう。
俺は少し悩んだ末、武丸屋に忍び込むことに同意した。
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