百貨店の戸崎さん

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 この残った一人のリスナーは、俺の事を信じてくれている。  今カーテンを開いたのが戸崎さんだと信じてくれている。  そう思った俺は動画キャスの配信を止める事無く、再び紳士服売り場に出て行った。  リスナーからのメッセージは無い。コメントを入れずに配信を見るリスナーは少なくない。どうやら、このリスナーもそのタイプのリスナーだったのだろう。  俺は店内を映しながら、スーツが並んでいる所へ移動していく。康徳はよっぽど怖かったのか、試着室の中から出て来ない。  スーツの並びに沿って、一歩、二歩と歩き出した時、少し離れた場所に立っているマネキンの首がゴトンという音と共に外れた。  まるでギロチンで処刑されたように、マネキンの首は俺の足下に転がってくる。  思わず叫びそうになる口を片手で覆って、カメラをマネキンの首に向けた。その瞬間、マネキンの首はグルンと回転し、俺の顔を見上げた。  後ずさりしたいが、恐怖で身体が動かない。康徳に助けを求めたいが、声が出ない。  唯一動く黒目を動画キャスの画面に戻すと、残っていた一人のリスナーから書き込みがされていることに気付いた。 【コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス】  コメントの打ちこみ制限ギリギリまで、その文字は打ち込まれていた。  マネキンの首に視線を落とすと、まるでそのマネキンが喋っているかのように口をパクパクさせている。
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