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どうしても食べる気が起きない僕は、母に体調が悪いと言って箸を置き、自分の部屋に戻った。
スマートフォンで検索してもそんな名前の野菜は見当たらない。母が名前を間違えているだけだろうか。
気になった僕はダウンコートを羽織り、外へ飛び出した。
無人販売所が百メートル程先に見えてくる。その無人販売所の前にボーッと立っている老人がいる事に気付いた。
例のミルエハラカトヒーを補充しているようだ。僕は老人に気付かれないよう後をつける事にした。
息を殺し、足音を立てずに追跡すること十五分。老人は牛や豚を飼育している納屋に入っていく。
顔を半分だけ出してその納屋を覗くと、豚や牛が並んでいる隣に明らかに人の形をしている物体が転がっている事に気付いた。
目をこすってソレを凝視すると、身体の至る所からミルエハラカトヒーが生えていることに気付いた。まるで椎茸でも収穫するようにミルエハラカトヒーを毟り取っていく老人。
「斉藤さんはええ実を作ってくださるなぁ」
老人のその独り言によって、ミルエハラカトヒーを実らしている物体が、数ヶ月前に心臓発作で死んだ近所の斉藤さんだということに気付く。
僕が青ざめた顔で踵を返した時、肌を異様な程にプルプルさせた母が笑顔で立っていた。
「安心しなさい。あなたが他言しない限り、実を作る順番は亡くなった人からだから」
帰宅して無理やりミルエハラカトヒーを食べさせられた僕は、何に対して恐怖を感じていたのかを忘れてしまった。
ただ、肌がプルプルして気持ちがいい。
もっと食べたい。
もっと。
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